プロジェクト体系について
(1)計画
計画とは,プロジェクト目標に従ってプロジェクト全体を見通した
「対象範囲」,
「スケジュール」,
「コスト」,
「組織と要員」
を明らかにするプロセスのことである。
「プロジェクト目標の明確化」,「開発環境の最適化」,「開発方法論と工程の決定」,「見積り」,「リスクの識別と対応策の策定」,「WBS(Work Breakdown Structure)とスケジューリングの策定」,「組織計画と要員計画」,「品質管理計画」,「文書化計画」,「教育計画」,「システムの大まかな稼働計画」などを決める。
これらの計画は,「プロジェクト計画書」と呼ぶドキュメントにまとめられる。
(2)トラッキングとコントロール
トラッキングとは,プロジェクトの状況と実績を,的確かつ継続的に把握することを指す。一方,コントロールとは,プロジェクトが計画から逸脱したときに適切な対策を講じることを意味する。
プロジェクトにおけるトラッキングの対象としては「品質」,「進ちょく」,「コスト」,「リスク」の4つがある。これらの状況と実績は,「プロジェクト報告」(週次報告,月次報告など)で共有する。
トラッキングとコントロールの基本的な方法は,「プロジェクト管理」の時代とあまり変わっていない。ただし,トラッキングとコントロールを効果的に実現するため,グループウエアを始めとするPMS(プロジェクトマネジメント・システム)を活用するのが最近の傾向だ。また,進ちょく管理の手法として,EV(Earned Value:出来高)で進ちょくを測るEVM(Earned Value Management)が脚光を浴びているのも,最近の特徴だ。
(3)リスク管理
リスクとは,プロジェクトにおける品質・納期・コストの目標達成を阻害する「潜在的な問題」のことである。プロジェクトの「リスク管理」とは,リスクを前もって予測し,現状のリスクを評価して危険度を定量化し,その回避策を作成・実行するプロセスを指す。
(4)契約管理
情報システム開発にかかわる契約の準備・締結から契約の履行までを管理するプロセスが「契約管理」である。顧客を対象にした契約管理だけではなく,協力企業との契約管理も行う。
「プロジェクトの計画」,「トラッキングとコントロール」,「リスク管理」,「契約管理」の各プロセスの結果は,すべて「プロジェクト計画書」にまとめられる。
2014年11月20日木曜日
2014年11月19日水曜日
プロジェクト管理:EVM
プロジェクト実施段階で正確な進ちょく情報を収集・分析できなければ意味がない。
それを実現する代表的な管理手法が「EVM(Earned Value Management)」
EVMでよく使う4つの基本的な指標
(1)EV(Earned Value)
(2)PV(Planned Value)
(3)AC(Actual Cost)
(4)BAC(Budget At Completion)
EVとACはプロジェクトの途中で進ちょく状況を把握
PVとBACは計画作成時に定めた進ちょくの目標を示す
【例1】
1人のプログラマが,毎日1本ずつ,5日で5本のプログラムを作成する」という計画
あるプログラマが実際に作業を始めたところ,3日目終了時点で2本のプログラムしか完成しなかった。
BAC 5人日(総予算):作業予算コスト(工数)
PV 3人日(計画値):予定は3日目で3人日
EV 2人日(実績値):作業実績は2本が完成し、2人日の計画予定の実績消化
AC 3人日(実コスト):作業工数は3日消化
EVMでは,これらの指標をグラフ化することで,計画と比べた作業の遅れやコストの超過などを視覚的に把握しやすくする。EV,PV,ACの各指標は,コストを縦軸,経過期間を横軸とするグラフで,3本の曲線として表すことができる。
◆EVMの実運用
EVMを実際のプロジェクトに適用する前に,「出来高(EV)をどのように積み上げていくのか(累積方法)」についてルールを決めることが必要
加重比率計上法では,1つの作業に複数のマイルストーンを設定し,マイルストーンごとに完了基準と“進ちょく率”を決めておく。作業がマイルストーンに達して完了基準を満たしたら,その作業の予定コストのうち,進ちょく率に相当する分だけ出来高に加算する。
この方法は,時間をかければ出来高が増えていくタイプの作業に向く。作業量自体は多くないが期間が長い作業の場合,途中で実績を計上しないと計画とのかい離が大きくなる。
マイルストーンを設定することで,このような誤差を抑えることができる。
例えば開発工程で「モジュール仕様作成」,「コーディング」,「単体テスト」,「レビュー」などをまとめて1つの作業として扱う場合は,この方法を適用するとよい。
◆現状把握のための指標は4つある。
「SV(Schedule Variance)」
「CV(Cost Variance)」
「SPI(Schedule Performance Index)」
「CPI(Cost Performance Index)」
SVとCVは“差異”を見るための指標である。
SV(EVとPVの差)はスケジュールの遅れを,CV(EVとACの差)はコスト超過を示す。
【例2】
あるプロジェクト(期間は8月30日~12月13日)の11月1日時点における進ちょく状況
BAC 1000日
PV 600人日
EV 500人日:作業遅れ
AC 650人日:コスト超過
BACは1000人日なので,プロジェクト完了までに達成すべき出来高があと500人日分残されていることが分かる。
SV PV-EV -100人日なので,100人日分の作業が遅れている
CV EV-AC -150人日であり,150人日分のコストが超過
一方,SPIとCPIは“効率”を見るための指標だ。
SPI(EV/PV) 0.83 スケジュールは17%遅れ
CPI(EV/AC) 0.77 コストは23%超過
これらの値から,ており,していると判断できる。
SPIとCPIは,折れ線グラフに加えて,「コントロール・チャート」(レインボー・チャートとも呼ぶ)を用いると管理しやすい。縦軸にSPIやCPIの値をとり,横軸に経過期間をとる。そして,SPIとCPIに設定した「しきい値」を境に上下に区切られた領域を色分けすることで,プロジェクトの“安全性”の度合いが一目で分かるようにする。
たとえば、SPIとCPIの値が0.98以上なら「青(順調)」,0.92以上0.98未満なら「黄(要注意)」,0.92未満なら「赤(即対応)」と設定している。
◆完了時点の状況を予測
「EAC(Estimate At Completion)」は,計画した作業がすべて完了するまでに実際にかかるコストの予測値を表す。計算式は「AC+(BAC-EV)/CPI」などがある。グラフの縦軸で見たEACの値が,完了時点のコストを表す。これを横軸で見ると,作業が完了する時期を予測できる。
このEACとBAC(完了時点での計画上の出来高)の差を,グラフの縦軸で見たものが「VAC(Variance At Completion)」である。これにより,完了時点でどれだけコストが超過するのかを予測できる。
【前述の例2】
BAC 1000人日
EAC (AC+(BAC-EV)/CPI) 1299人日 299日分のコストオーバー
スケジュールは2週間の遅れ
「ETC(Estimate To Complete)」
EACから現時点のACを差し引いたもの。プロジェクトが完了するまでに,あとどれだけの作業が残っているかを表す。
【前述の例2】
EAC ((BAC-EV)/CPI) 649人日
それを実現する代表的な管理手法が「EVM(Earned Value Management)」
EVMでよく使う4つの基本的な指標
(1)EV(Earned Value)
(2)PV(Planned Value)
(3)AC(Actual Cost)
(4)BAC(Budget At Completion)
EVとACはプロジェクトの途中で進ちょく状況を把握
PVとBACは計画作成時に定めた進ちょくの目標を示す
【例1】
1人のプログラマが,毎日1本ずつ,5日で5本のプログラムを作成する」という計画
あるプログラマが実際に作業を始めたところ,3日目終了時点で2本のプログラムしか完成しなかった。
BAC 5人日(総予算):作業予算コスト(工数)
PV 3人日(計画値):予定は3日目で3人日
EV 2人日(実績値):作業実績は2本が完成し、2人日の計画予定の実績消化
AC 3人日(実コスト):作業工数は3日消化
EVMでは,これらの指標をグラフ化することで,計画と比べた作業の遅れやコストの超過などを視覚的に把握しやすくする。EV,PV,ACの各指標は,コストを縦軸,経過期間を横軸とするグラフで,3本の曲線として表すことができる。
◆EVMの実運用
EVMを実際のプロジェクトに適用する前に,「出来高(EV)をどのように積み上げていくのか(累積方法)」についてルールを決めることが必要
加重比率計上法では,1つの作業に複数のマイルストーンを設定し,マイルストーンごとに完了基準と“進ちょく率”を決めておく。作業がマイルストーンに達して完了基準を満たしたら,その作業の予定コストのうち,進ちょく率に相当する分だけ出来高に加算する。
この方法は,時間をかければ出来高が増えていくタイプの作業に向く。作業量自体は多くないが期間が長い作業の場合,途中で実績を計上しないと計画とのかい離が大きくなる。
マイルストーンを設定することで,このような誤差を抑えることができる。
例えば開発工程で「モジュール仕様作成」,「コーディング」,「単体テスト」,「レビュー」などをまとめて1つの作業として扱う場合は,この方法を適用するとよい。
◆現状把握のための指標は4つある。
「SV(Schedule Variance)」
「CV(Cost Variance)」
「SPI(Schedule Performance Index)」
「CPI(Cost Performance Index)」
SVとCVは“差異”を見るための指標である。
SV(EVとPVの差)はスケジュールの遅れを,CV(EVとACの差)はコスト超過を示す。
【例2】
あるプロジェクト(期間は8月30日~12月13日)の11月1日時点における進ちょく状況
BAC 1000日
PV 600人日
EV 500人日:作業遅れ
AC 650人日:コスト超過
BACは1000人日なので,プロジェクト完了までに達成すべき出来高があと500人日分残されていることが分かる。
SV PV-EV -100人日なので,100人日分の作業が遅れている
CV EV-AC -150人日であり,150人日分のコストが超過
一方,SPIとCPIは“効率”を見るための指標だ。
SPI(EV/PV) 0.83 スケジュールは17%遅れ
CPI(EV/AC) 0.77 コストは23%超過
これらの値から,ており,していると判断できる。
SPIとCPIは,折れ線グラフに加えて,「コントロール・チャート」(レインボー・チャートとも呼ぶ)を用いると管理しやすい。縦軸にSPIやCPIの値をとり,横軸に経過期間をとる。そして,SPIとCPIに設定した「しきい値」を境に上下に区切られた領域を色分けすることで,プロジェクトの“安全性”の度合いが一目で分かるようにする。
たとえば、SPIとCPIの値が0.98以上なら「青(順調)」,0.92以上0.98未満なら「黄(要注意)」,0.92未満なら「赤(即対応)」と設定している。
◆完了時点の状況を予測
「EAC(Estimate At Completion)」は,計画した作業がすべて完了するまでに実際にかかるコストの予測値を表す。計算式は「AC+(BAC-EV)/CPI」などがある。グラフの縦軸で見たEACの値が,完了時点のコストを表す。これを横軸で見ると,作業が完了する時期を予測できる。
このEACとBAC(完了時点での計画上の出来高)の差を,グラフの縦軸で見たものが「VAC(Variance At Completion)」である。これにより,完了時点でどれだけコストが超過するのかを予測できる。
【前述の例2】
BAC 1000人日
EAC (AC+(BAC-EV)/CPI) 1299人日 299日分のコストオーバー
スケジュールは2週間の遅れ
「ETC(Estimate To Complete)」
EACから現時点のACを差し引いたもの。プロジェクトが完了するまでに,あとどれだけの作業が残っているかを表す。
【前述の例2】
EAC ((BAC-EV)/CPI) 649人日
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