2012年5月22日火曜日

ストレージ技術 覚書3

◆サーバー仮想化とストレージ仮想化

■サーバ仮想化
 サーバー仮想化では、1台の物理サーバー上に複数の仮想サーバーを動作させます。そのため、物理サーバーを統合し、使用率を向上させ電力やサーバー・スペースにかかる費用の削減なども可能です。仮想サーバーは、物理サーバーに比べ、圧倒的に迅速にユーザーに提供できるだけでなく、逆にサーバー・リソースが不要となった場合でも、容易に「廃棄」することが可能で、プロジェクトの効率化を実現します。

 さらに、サーバー仮想化環境では、物理サーバーの負荷変動や要件に応じて、指定したタイミングで仮想サーバーを物理サーバー上で移動させることが可能です。これは、物理環境で常につきまとってきた互換性に要する複雑さを軽減させる第一歩と言えます。

 ストレージ仮想化と別々にとらえられがちなサーバー仮想化技術ですが、サーバー仮想化においては、SAN(Storage Area Network)すなわちストレージ階層において、集約された高速大容量のI/Oのリード/ライトや複数サーバーのイメージの移動が発生します。そのため、パフォーマンスや容量増加の適切な対応、可用性向上、さらに効率的かつ最適化されたパス管理などを実現するストレージ仮想化がサーバー仮想化を支える重要な技術となります。

■ストレージ仮想化
 ストレージ仮想化によって、サーバーに影響を与えない、複数のディスク階層間、異機種混在環境を含む、ストレージ筐体(きょうたい)間での無停止のデータ移行が実現されます。後ほど詳しく触れますが、「今すぐ活用できるストレージ仮想化技術」としても仮想プロビジョニングや仮想LUNなどの先進のストレージ仮想化テクノロジーがEMCのSymmetrixやCLARiXだけでなく、各社の高性能なSANストレージ製品で提供されています。ストレージ仮想化の本質とは、複数のストレージ階層を単一の管理基盤の下で統合するものです。これによって、すべてのストレージ階層を容易かつ迅速に構成、管理し、環境を劇的に単純化し管理にかかるすべての手間とコストを削減します。

◆ストレージを効率良く運用する仮想プロビジョニング
(1)仮想プロビジョニング
 仮想プロビジョニングでは、サーバー、アプリケーションに対して、実装している以上の容量を仮想的に割り当て、プール化された共通プールが実際に使用している分だけが物理的な割り当てとなるため、利用率を大幅に向上できます。


 通常、新規のアプリケーション用などにストレージをプロビジョニングする場合、管理者は現時点で必要な容量ではなく、将来必要となる容量を考慮してプロビジョニングを行います。その際、ストレージ容量がなくなり、アプリケーションやビジネスのプロセスが停止してしまうリスクを軽減するため、また近い将来、再度プロビジョニングしなければならない頻度を減らすために、管理者ははじめから実際に必要以上の物理ストレージを割り当てしまいがちです。それにより、調達や運用の費用の悪化をもたします。

 これらの問題を解決するのが仮想プロビジョニングです。これは「シン・プロビジョニング」ともよばれ、必要な場合にのみ共通プールから物理ストレージを使用して、ホストに自動的に割り当てます。仮想プロビジョニングによって、ストレージの有効活用だけでなく、従来のストレージ・プロビジョニングにかかっていた手間や時間を劇的に削減することが可能です。

(2)仮想LUN
無停止でデータを移行する仮想LUN


 仮想LUN(Logical Unit Number)は、単一のストレージ・システム内において、移行元となるLUNから同じ、もしくはより大きいサイズの移行先LUNに対して、アプリケーションの停止を伴わないデータ移行を実現するテクノロジーです。仮想LUNは下記の価値をユーザーにもたらします。
・ストレージ筐体内での情報ライフサイクル管理(ILM)の実現
・パフォーマンスの向上
・無停止のシステム構成変更

 仮想LUNにより、効果的な情報ライフサイクル管理戦略の構築と実行が可能です。情報ライフサイクル管理とは、あらかじめ定義したポリシーに従ってアクセス頻度の少なくなったデータを、高速なファイバ・チャネル・ドライブからより低速で大容量、安価なSATAドライブなどに自動移動させる技術です。これにより、ハードウエア・リソースをより効率的に使用し投資対効果の最大化を図ることが可能です。

 さらに、仮想LUNは過負荷のディスクから負荷の低いディスクにデータを移行させることで、パフォーマンス向上を実現します。従来、多くの通常の移行技術では、LUNの特性の変更は許されません。一方、仮想LUNは、異なる特性のLUNへ移行することが可能で、パフォーマンス向上を実現します。また、仮想LUNによって、ディスク・アレイ・エンクロージャー間を無停止でデータ移動させることが可能です。そのため、ホストにかかるオーバー・ヘッドを削減し、システムを停止しないサービス・レベルを維持した構成変更を実現します。

(3)完全に自動化されたストレージ階層化 FAST(Fully Automated Storage Tiering)
FASTによる完全に自動化されたストレージ階層化

 仮想LUN機能をベースにEMC独自のテクノロジーとして提供しているのが、FAST(ファスト:Fully Automated Storage Tiering)です。FASTではストレージ・インフラストラクチャの管理を劇的に容易にし、ストレージにかかる全体的なコストが大幅に削減されます。

 またFASTは、変化するパフォーマンス要件に応じてストレージ階層間の動的なデータ配置や移行を自動化することで、適切なデータを適切なストレージ階層に適切なタイミングでの配置が可能です。コストとパフォーマンスに関する要件を最適化して、ストレージ階層化によるメリットを最大化します。

 特にEMCのハイエンド仮想ストレージSymmetrix V-Maxにおいては、価格性能比の観点から分類される、ストレージ階層に関するすべての選択肢を同一筐体で提供します。一例としては、以下の内容になります。

・「階層0」ストレージとして
最小限の遅延と高いパフォーマンスが求められるトランザクションへの対応としてフラッシュ・ドライブ。
・「階層1」として
パフォーマンス重視のアプリケーションへの対応として、15,000回転のファイバ・チャネル・ドライブ。
・「階層2」として
大量のデータの一括処理やバックアップなど比較的低いパフォーマンスでも十分で、コスト要件を重視する大容量SATAドライブなど。

 FASTでは、システムにかかる負荷は能動的に監視されます。これは使用頻度の高いデータはより高パフォーマンスのフラッシュ・ドライブへ自動的に移動され、逆に使用頻度の低いデータは、より大容量のSATAドライブに自動的に移動するという具合です。FASTはこれらの処理を動的かつサーバーを停止させず、ビジネス継続性や可用性に影響を与えずに実行します。

 また今日、フラッシュ・ドライブは、ストレージ業界に大きな変革をもたらしていますが、FASTによって、より多くのユーザーがフラッシュ・ドライブのメリットを享受できるため、導入の加速が期待されます。

(4)仮想環境でのパス制御
(5)物理と仮想環境のエンド・ツー・エンド管理
仮想環境でのパス制御、物理と仮想環境のエンド・ツー・エンド管理

 従来の仮想サーバー環境における複雑で限定的なフェイル・オーバーとロード・バランシング・ソリューションに対して大きな優位性を提供するのがEMC PowerPath/VEテクノロジーです。例えば、従来のパス制御に関するソリューションは、VMware VMotionなどの仮想マシン(VM)の移動に伴う、ストレージ・インターフェースの飽和による予期しないパフォーマンス劣化を避けることができませんでした。これに対し、高度なロード・バランシングとフェイル・オーバー機能を持つPowerPath/VEでは、仮想環境において常に高いパフォーマンス・レベルを維持します。PowerPath/VEはVMwareおよびHyper-Vの両方をサポートします。

 物理と仮想環境を包含するエンド・ツー・エンドのリソース・マッピングと管理は、仮想化を支える重要な技術です。EMCでは、物理と仮想環境における統合管理を実現するためのストレージ管理ソリューションを提供しています。そのためVMware vCenterと連携し、仮想マシンを特定し、適切なストレージ・リソースを割り当てるなどが可能です。

 今後、ますます現実化される仮想データセンターの進展においては、高度に統合されたサーバーやアプリケーションが、ペタ・バイト級の大容量ストレージを高パフォーマンス、高可用性のもとでアクセスする環境の構築、効率的な運用が必要です。

 そしてそれを支えるストレージ仮想化は、サーバー仮想化と両輪をなす重要なテクノロジーなのです。