2022年9月3日土曜日

政教分離とは

政治と宗教との関係で考察してみた

1.政教分離の原則

政教分離原則で注意が必要なのは、「国家と宗教」の関係について規律しているだけで、「政治と宗教」の関係について規律したものではないということです。

「政」「教」分離という言葉からは、いかにも「政治と宗教の分離」を謳っているように読めますが、政教分離の「政」とは「政府」のことを指している。

日本国憲法の条文

第20条 

 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。

② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。

③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

第89条 

 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

憲法が禁止しているのは、国家権力が特定の宗教団体を優遇することや、宗教的活動をすることです。

政治家個人が特定の宗教団体と関係を持つことや宗教的活動をすること自体については、直接的には規定していません
政治家や政党が無限定に特定の宗教団体と関係を持つことが許容されるという訳ではありません。特に、首相や閣僚などは権力の座にあるわけですから、特定の宗教団体の行事に公的立場で参加すること(例:靖国神社公式参拝など)は、政教分離原則に反する可能性が高く、憲法違反を主張する裁判も起こされ、一部の裁判所では違法との判断も出されています。

2.政治と宗教の関係について

今回の旧統一協会と政治家との関係を問題視するに当たり、政教分離原則違反だという批判の仕方は的外れと言えるでしょう。

選挙協力して貰った見返りに、旧統一協会に対して政府与党が特別の便宜を図っていたなら(例:旧統一協会が主催するイベントに国が協賛して公金を支出していた)、政教分離原則に真っ向から反することになりますが、少なくとも現時点においては表面化はしていません。

このことは、宗教団体を旧統一協会以外の宗教団体に置き換えてみればよく分かるはずです。仏教系、キリスト教系、神道系のさまざまな宗教団体が国政選挙の際に政党を支持・応援する様子は普通に目にしますが、これらの活動によって、特定の宗教団体の教義や目的の達成を政治の側が実現するように動くような事態にならない限り、それ自体が政教分離原則違反だと評価されることにはならない。

 もちろん、政治と宗教が過度に結びつくことは、政治の公平性を歪めるおそれがありますから、その関係は謙抑的であるべきですし、政教分離原則が日本国憲法に盛り込まれるに至った経緯(大日本帝国憲法の下で、天皇制権力が国家神道を作って国教としての特権的地位を与え、「神国日本」の名で軍国主義をあおったという政教一致への反省)からすれば、政治家が国家神道の象徴であった靖国神社へ参拝することなどは厳しく批判されるべきでしょう。

3.旧統一協会との関係は何が問題なのか?

 それでは、今回の問題の本質は何でしょうか?

 それは、旧統一協会が、いわゆる霊感商法などを駆使して信者から多額の金銭を巻き上げるという違法行為を組織的に繰り返してきた反社会的組織であり、そのような反社組織から選挙応援などの恩恵を受け続けてきた見返りとして、安倍元首相を含む多くの政治家が旧統一協会が主催するイベントに賛同するメッセージを送り続けるなどして、旧統一協会による違法行為を黙認・助長し、さらに言えば「広告塔」になってきた結果、数十年にわたって霊感商法などの被害が続いてきてしまったということです。

 つまり、旧統一協会は、「有名な政治家が関わっているから信用できる組織だ。」という宣伝を行い、これを見た人々が旧統一協会を「まともな団体なのだろう。」と信じてしまい、多額の献金などに追い込まれていくという関係にあったのではないでしょうか。