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2021年7月11日日曜日

小規模不動産特定共同事業-5

8.クーリング・オフ

クーリングオフは契約成立前書面及び契約成立時書面に記載する他に、クラウドファンディングのサービスページにて、クーリングオフの内容について表示を行う必要があります。

また、(2)のクーリングオフの起算日の考え方についてもシステム上非常に重要で、一般的には①の契約成立時書面のデータのダウンロードの行われた日をクーリングオフの起算日とすることが多いので、不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディングのシステムでは、契約成立時書面のデータを各投資家がダウンロードした日をログとして取り、システム管理者側で確認できる状態にする必要があります。

なお、クーリングオフの有効な8日間ですが、例えば2月1日に契約成立時書面を投資家がダウンロード(契約締結)した場合、2月8日まで、クーリングオフの権利があります。


9.定期的な情報提供

クラウドファンディングを通じて集めた資金を不動産を運用するにあたって、事業の状況等について情報が定期的に投資家に届けられるように、システムを事前に準備しておく必要があります。

案件(ファンド)毎に投資家に通知すべき事項があった場合の情報掲載箇所を事前にサービスページに用意しておき、また最低年に一回作成される財産管理報告書を送付する準備も必要です。

また、財産管理報告書等は電磁的方法による提供(投資家のマイページなどで掲載)について事前に同意が必要なので、投資家登録して貰う際に同意を取り付けられるシステム設計としましょう。


10.重要事項の閲覧

「②貸借対照表及び損益計算書の要旨」です。あくまでの要旨で良いので事細かに勘定科目を分けてまで開示する必要は無いです。重要事項の説明書類の末にキャプチャを入れる形で対応される会社が多いです。また、上場していて財務諸表を開示している場合などは、URLでリンク先を明示しておけば十分となります。

そのほかには 「⑤対象不動産の価格及び算定方法」は重要度が高いです。 管轄している都道府県庁(国土交通省)にもよりますが不動産鑑定評価等の第三者評価の取得を原則として求められることもありますので、可能な限り取るようにしましょう。


「⑨不動産特定共同事業者等(特例事業者を除く。)の報酬に関する事項」は、主に案件の組成時や物件管理、物件売却時に不動産特定共同事業者等がどの程度の金額を報酬として受け取るのかを記載します。月単位の固定額で定められることもありますし、売却価格の○%といった定め方をする時もあります。

「⑪予想される損失発生要因に関する事項」や「⑫損失の負担に関する事項」は、ガイドラインにて記載するべきものとして定められているものは抜け・漏れの無いようにしましょう。

そのほかは内容としては概ねどの会社も同様となりますので、案件ごとというよりも先にテンプレートを作成して許可・登録申請時に規制当局の確認も得ておくことが重要です。


(2)で、投資家が書類を見やすい場所(案件の募集ページが一般的)に表示し、また、リスクに関する事項は他の文字と比べて小さくしたりすることの無いように作成される必要があります。

また、電子取引業務等の期間、即ち運用期間中も投資家がいつでも書類を見れるように、マイページに「交付書類一覧」などのページを用意して、投資家がいつでも過去交付書類として確認出来る状態にする必要があることに留意しましょう。


11.分別管理の徹底及び金銭の預託

預託を行うことの出来るのは、それぞれ一号と三号の媒介等の出来る二号と四号事業者に限られます。二号や四号事業の場合、自社で不動産を運用する訳では無く、他の不動産特定共同事業者の募集案件への出資を集めるためのプラットフォーマーとなる形になります


留意点としてはまず預託を受けるには当然分別管理を徹底する必要があるため、入金を受け入れる銀行口座を別途用意する必要があります。

その他には預託を受けた後にも、少なくとも3ヶ月に一度は事業参加者に投資意思の確認を行えるようにシステムを考慮して構築する必要が出てくるので、その点でも留意が必要です。

また、今回は預託に関してガイドラインに沿って解説しておりますが、基本的には不動産特定共同事業法の場合、預託を受けておらず、事業者はどのような形で入金を受けるのかというと、例えば一号事業者の場合、自社名義で運用対象となる不動産物件を取得・運営するため、分別管理用の銀行口座を案件(ファンド)ごとに用意し、そこに投資家に入金してもらいます。

なので実際に不動産投資型クラウドファンディングを始めると結構な数の銀行口座を用意しておく必要があるので、もし事業として始めることを検討される場合は、余裕を持って早めに銀行口座開設の手続きをとっておくと安心です。


これにて電子取引に必要な事項は終了です

2021年7月4日日曜日

小規模不動産特定共同事業-4

 前回の続き

7.適切な審査

審査を受けるので要件を充足させる必要があります

不動産クラウドファンディングに代表される電子取引では、出資に係る契約成立前書面や契約成立時書面について、投資家はもちろん閲覧できるものの、相対で投資商品のスキームやリスクについて説明を受ける訳ではありません。その中で実務上も重要なのが、「財務状況、事業計画の内容及び資金使途その他電子取引業務の対象とすることの適否の判断に資する事項の適切な審査(以下「審査」と いう。)を実施した上で、その審査結果を自らのホームページに掲載すること等により、投資家の被害を未然に防止することが必要と考えられる。」という箇所で、ガイドラインでは、社内の審査結果をホームページに掲載することが必要とされています。許認可の申請の際も、どのような社内審査をファンドの組成時に行うのかについては確認されますので、準備が必要です。

次に記載されている「また、」以下の審査部門の独立性については一般的な記載と言えるでしょう。もともと金融商品取引業者である場合はコンプライアンスの部署が行うことが多く、不動産特定共同事業者のみの許可(登録)を受ける不動産会社の場合、管理系の部署の方が審査を担うことが傾向としては多いです。

内容的にも形式的にも充足させることが必要です。

(1)人的構成・審査の独立性の確保

基本的には営業部門から独立していることという大原則に沿って審査する部署及び責任者を決めていく必要があります。

会議体で審査する体制が作れる場合は、投資委員会やリスク管理・コンプライアンス委員会のような会議体で審査する体制も可能です。

(2)審査に係る社内規則及び社内マニュアルの整備及び遵守の確認

ファンドの募集にあたっては、事業計画(物件の運用計画といった方が分かりやすいかもしれません)や事業者の財務状況等に関する審査を行い、その結果をホームページ等で公表することが必要なのは既述の通りです。

とはいえ、では実際にどのような審査を行わないといけないかについて、その時その時に適当にやれば良い訳ではなく、ガイドラインの①及び②に記載されている通り、社内規則及び社内マニュアルで審査項目等を事前に定めておく必要があります。許可や登録の申請の際の審査上も非常に重要なので、きちんと準備します。

(3)審査の実施

審査担当者の審査に対する質問の出し方や、財務状況や物件の確認に関する審査のあり方が定められています。

②に定められている通り、審査の際には、確認事項を書面にて送付し、書面にて回答を受領することによってきちんと証跡も残し、その他には③・④で経理状況のヒアリングについてや、物件の確認についても記載されています。

(4)審査項目等

①財務状況の「対応が求められる事項」については、「a.直近の財務諸表において赤字になっていないこと」が電子取引業務(クラウドファンディング)を行う上での審査項目に定められていることに常に留意する必要があります。許認可の申請の際にも事前審査で直近決算の損益計算書は特に注意深く確認されます。直近決算が赤字の状態で申請手続きを行う場合は、進行中の会計期間が黒字で確定してから、申請書が初めて受理されるといったこともありますので、許認可の取得スケジュールは注意深く考えておく必要が出てきます。

また、実際に許可(登録)手続きが完了してサービスを始めていても、その後赤字に転落した場合は実質的に新規のファンドの募集が出来なくなる可能性も出てきますので、会社全体の損益状況は適切に管理するようにしましょう。

bの方は少し分かりにくいですが、
例えば1号事業者の資本金は1億円以上である必要がありますが、その事業者の資本金が1億円の場合、「純資産が資本金又は出資の額の100分の90に相当する額に満たない」という状態は、繰越欠損金などの原因で純資産額が9,000万円未満になっていなければ大丈夫ということです。こちらについてはあまり問題になる会社は少ないですが、金額の大きな減損などで純資産が大きく毀損するようなことがある場合には留意する必要があります。


①財務状況の「対応が期待される事項」については、 損益に関する変動要因や監査の状況の把握が期待される旨が記載されています。

また、監査の状況については、小規模不動産特定共同事業者は監査法人からの監査を受けることが必須条件ではないため、それに代替する確認方法について(注)にて記載されています。


②の事業計画についてはどうしても記載するべき若しくは開示するべき情報の幅が広い関係で留意すべき事項が多いので、都度ファンド・案件毎に注意して要記載事項を整理する必要があります。


③の資金使途についても②の事業計画と同様に記載するべき若しくは開示するべき情報の幅が広い関係で留意すべき事項が多いので、都度ファンド・案件毎に注意して要記載事項を整理する必要があります。


④のその他の審査事項としては、イ-b.の「過去の投資家被害」が特に全ての事業者に係る大きな留意点で、ファンドの償還期限を過ぎても、物件が売却できなかったりして元本が償還できなくなった場合、次回以降の電子取引による募集が出来なくなるため、元本の償還は継続的に行えるように案件を組成する際には物件の選定やスキームの組み方を良く考えて行うようにしましょう。

(5)審査結果等の公表

審査結果等の公表はシステムの要件としても重要で、契約成立前書面の記載事項として審査項目とそれに対する審査結果のページを用意し、ホームぺージ等で閲覧できる状態におくことが求められています。具体的な対応としては、クラウドファンディングのサービスページにおいて、各ファンドの募集時に投資家登録を済ませた利用者が閲覧できるようにしている事が多いです。

(6)社内記録の作成、保存

審査結果に関する記録は10年間の保管が義務付けられていますので、文書管理規程などを整備し、誤って破棄などすることのないようにしましょう。


2021年6月24日木曜日

小規模不動産特定共同事業-3

前回の続編

電子情報処理組織の管理について

要約すれば、不動産特定共同事業法に基づくクラウドファンディング(電子取引)を行う事業者の電子情報処理組織に不備などがあった場合、どのような被害が起こりうるかが記載され、注意喚起と、体制整備の重要性について説かれています。

(1)基本方針・取扱規程等の整備

①に記載されている通り、電子取引業務において用いる電子情報処理組織の管理を十分に行うための基本方針を策定し、公表する必要があるということです。

これは電子取引業務ガイドラインの制定によって求められるようになった事項です。公表が義務付けられているため、許可の申請時に公表する予定の基本方針を規制当局(都道府県庁若しくは国土交通省、場合よっては金融庁も含む)に対して提出するのは勿論のこと、許可取得後に不動産クラウドファンディングの事業を開始する際にはサービスページに基本方針を公表しておく必要があります。

例文:引用(クリアル株式会社)

電子情報処理組織の管理に関する基本方針

クリアル株式会社(以下「当社」といいます。)は、不動産特定共同事業法に基づき、下記の通り、電子取引業務において用いる電子情報処理組織の管理に関する基本方針を定め、遵守いたします。

1. 電子情報処理組織の安全管理

当社は、電子情報処理組織の管理にあたり、お客様の財産への被害および情報の流出被害を防止するため、電子情報処理組織の管理に係る取扱規程を整備し、適切な安全対策を講じます。

2. 法令等の遵守

当社は、電子情報処理組織の管理について、関係法令やその他国が定めるガイドライン、規範に関する法令を遵守いたします。

3. 基本方針の継続的改善

当社は、お客様の財産への被害および情報の流出被害を防止するため、電子情報処理組織の管理に関する基本方針の定期的な見直しおよび改善に努めます。

4. 電子情報処理組織の管理に関する質問、相談への対応

当社の電子情報処理組織の管理に関するご質問やご相談、ご意見については、お問い合わせ窓口よりご連絡ください。

当社の電子情報処理組織の管理責任者は以下のとおりです。

サービスデベロップメント部・部長

クリアル株式会社

〒110-0015 東京都台東区東上野2-13-2

制定日:2019年6月1日


②についてで、電子情報処理組織の管理に関する規程を定める必要性が述べられています。この段階では、”システム管理規程”などで、システムの取り扱いなどについての最低限の事項を規定すれば十分です。

(2)組織体制の整備

(2)の①で重要となるのは電子情報処理組織を管理する責任者を設置する必要があり、許可申請の際には責任者名を明示して、その責任者となる方の経歴や保有資格などから、電子情報処理組織を適切に責任を持って管理出来るかどうかの審査を受けることとなります。社内に元々システム周りに精通する方がいる場合は問題ないのですが、そうでない場合は、責任者の選定若しくは採用は十分に検討した後に行う必要があります。

②の運用状況の遵守状況の記録及び確認を取ることについては、情報処理組織を管理する責任者の方で確認するのは勿論のこと、内部監査や内部統制などを担う部署でも定期的にチェックする体制が望ましいです。

③の情報管理を行うための台帳は、元々文書管理規定やシステム管理規定で定められていない場合は、別途規定して運用する必要があります。

④のリスクについては、リスク管理規程などで不動産クラウドファンディングを行う上でのシステムリスクを洗い出した上で、そのリスクに対する対応事項を規定する必要があります。

⑤は②に近く、 電子情報処理組織の運用状況について、運用責任者(部署)が定常的にチェックするとともに、第三者(内部監査や内部統制を行う部署、若しくはリスク管理委員会などの会議体)のチェック体制を構築する必要があります。

⑥~⑧の個人情報の漏えい防止や漏えい時の対応は、システム関連の規程に定める他に、個人情報取扱規程などで定めるのが良いです。なお、特に個人情報の漏えいの防止体制については、 ISO/IEC27001、JISQ15001、プライバシーマークの3つの認証のうちの何れかを有していると十分な体制があると認められるので、このためだけに取る程ではなくても、元々取得を検討している場合は取っておくと許可申請の際に楽になります。


(3)人的体制の整備

(3)①の非開示契約等の締結については、特に外部に委託することがある場合は必須です。

②の教育及び訓練については、不動産特定共同事業法全般に関する研修などもそうですが、基本的に定期的に研修を行うように事前に規程で定めて、研修などを実施した際は研修資料や研修参加者の記録を残していく運用が良いです。

③の電子情報処理組織の管理に係る責任者については、システムエンジニアとして経歴がある人が望ましいという趣旨の記載があり、それに合わせて社内若しくは場合によっては社外で適切な人材を探して対応することになります。


(4)物理的・技術的な管理体制の整備

(4)はシステムの運用に係るもので、アクセス権のコントロールは勿論のこと、ログの取得や監視体制の必要性など、多くの要件があります。不動産クラウドファンディングを始めたい事業者はシステムの依頼先を選ぶ時にこの辺りの要件を満たすシステムかどうかを確認してください。


(5)システム障害時への対応

(5)のシステム障害時への対応としては、上記のような一連の要件に対応できる体制を備えるために、障害管理規程や、システム障害対応マニュアルを制定するのが良いです。


(6)外部委託先管理

(6)の外部委託先管理に関する条項は非常に重要です。多くの会社ではシステムの開発や管理を外部のシステム会社等に委託する場合が多いですが、その外部委託先もどこでも良いわけではありません。運用の際の注意事項としても重要ですが、特に許可申請などの観点でいえば、ガイドラインの要件を満たせるような外部委託先管理規程を制定するのが良いです。


(7)顧客財産への被害防止に対する対策

(7)の顧客財産への被害防止に対する対策も、システムの設計でも実務でも非常に重要です。

①では、特にどの事業者でも対応必須な事項として、出金先口座を必ずシステム上で登録してもらうこととし、会社から出金することがある時には、その振込先のみに送金することになります。

②は犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)の対応です。クラウドファンディングは、非対面取引のため、転送不要の簡易書留郵便にて登録された住所に発送し、登録者本人の受取を確認する必要があります。


例:

A-fundingに登録すると、はがきが送付されますが、その中で重要なのが、「簡易書留」で受取が確認出来、かつ投資家登録された住所に対して「転送不要」で送付することで、現住所に住んでいるかを確認することです。

転送不要と簡易書留での送付に加えて、認証コードを記載して投資家に送り、受け取ったら認証コードを入力してもらう形にすると、より本人確認の正確性が担保されます。


(8)顧客等による誤操作など操作ミスに対する対策

(8)の顧客等による誤操作など操作ミスに対する対策は、契約成立前書面や契約成立時書面を閲覧し、それに同意してファンドへの投資の申込みや、出資の確定を投資家が行う際に、申込み口数を誤って入力している際などに気づけるように、確認画面を出す必要がある旨を記載しています。


次回は「適切な審査」になります


2021年6月21日月曜日

小規模不動産特定共同事業-2

法律系の取扱いもあるが、システム系についての説明を中心とする

規定については「電子取引業務のガイドライン」を参照してほしい

1.電子取引業務のガイドラインとは

電子取引業務のガイドラインは、2019年4月15日に国土交通省より公表された、不動産特定共同事業法に基づいて電子取引業務を行う際の各種業務手続きや業務管理体制を明確化することを目的に作られた指針です。

不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン

2.目的・適用対象・適用時期

  • 「目的」と、「適用対象」の記載から分かることは、このガイドラインは不動産特定共同事業のうち、電子取引の業務フローや体制に特化したガイドラインとして公表されたもので、小規模を含む不動産特定共同事業の1~4号全てを対象としています。
  • 適用時期は2019年7月15日からで、これ以前から不動産クラウドファンディングを運営している事業者は勿論のこと、これから不動産クラウドファンディングを始めたい事業者にとっては、当該ガイドラインに沿った運営が出来る体制が出来ていることの分かる許可申請書を作成する必要があります。

3.商号等の表示

会社名(商号)や代表取締役の氏名など情報はウェブサイト(ガイドライン上は「ウェッブサイト」と記載)の見やすい箇所の表示されている必要のある旨が記載されています。

そして、具体的に表示されているべき事項の例として挙げられているのが、

  • 「会社名」、
  • 「不動産特定共同事業許可(許可番号 ○○県知事 第○○号)」、
  • 「代表者の氏名」、
  • 「事務所ごとの業務管理者の氏名」、
  • 「本店又は主たる事務所の所在地」、
  • 「電話番号」、
  • 「不動産特定共同事業の種別 第○号事業(電子取引業務を行う。)」

です。

基本的には記載例に沿った書き方が求められますので、これに忠実にクラウドファンディングのサービスページも作ります。フッターに会社名等の要記載事項を書いていく形です。


次回は組織管理になります。


2021年6月17日木曜日

小規模不動産特定共同事業-1

不動産クラウドファンディングの法的根拠です。

法律用語のオンパレードですが、どのような事業が該当するのかを明確にさせています。


第1章 小規模不動産特定共同事業とは

1-1.不動産特定共同事業法について

「不動産特定共同事業」(以下、「不特事業」といいます。)は、不動産証券化手法の一手法です。不動産証券化手法は、不動産投資の規模を小口化し、多種多様な投資家のニーズに応じた投資商品の提供を行うことで、不動産への新たな投資機会を創出することから、不動産市場への資金流入による市場の活性化を促進するとされています。

不動産証券化手法を利用した不動産投資を行うのは、一般には、金融機関や証券会社等の機関投資家が多いですが、個人を対象とした商品として不動産小口化商品があります。

不動産小口化商品は、昭和62年頃から供給が始まったと言われていますが、バブル経済崩壊後、不動産小口化商品を提供していた業者が倒産したこと等により、投資家に被害が及ぶという事件が発生しました。そこで、投資家保護を目的として、平成7年に「不動産特定共同事業法」(以下、「不特法」といいます。)が施行されました。

1-2.小規模不動産特定共同事業の創設の背景

平成7年の不特法施行以降、不特法に基づき不動産証券化事業を行う者(不動産特定共同事業者。以下、「不特事業者」といいます。)について、資本金や宅地建物取引業の免許等の一定の要件を設け、許可制としていました。

しかしながら、許可要件のハードルが高かったため、空き家・空き店舗等の再生をはじめとする小規模な事業を行うために不特事業者となることは広がっていない状況でした。

こうした背景を踏まえ、平成29年12月1日に施行された「不動産特定共同事業法の一部を改正する法律(平成29年法律第46号)」において、経済的リターンの追求だけでなく、地域活性化等への貢献をも目指す「志ある資金」等を活用して、空き家・空き店舗を再生する取組等を推進するため、地域の不動産業者等が不特事業を活用できるように、参入要件が緩和された「小規模不動産特定共同事業」(以下、「小規模不特事業」といいます。)が創設されました。

1-3.不動産特定共同事業及び小規模不動産特定共同事業の概要

(1)概要

「不特事業」及び「小規模不特事業」とは、事業参加者(以下、「投資家」といいます。)からの出資をもとに、不動産(宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第2条第1号に掲げる宅地又は建物をいい、現物不動産が対象となります。信託受益権化された不動産と区別するため、以下、「現物不動産」といいます。)の取引売買、交換又は賃貸借を行い、それらの不動産取引から生じる収益又は利益を投資家に分配する事業のことです。

不特事業及び小規模不特事業には、以下の種類があります。






























(小規模)不特事業に該当する事業には、例えば下記のようなものがあります。

①空き店舗をリノベーションした後に賃貸事業を営む場合

投資家からの出資をもとに空き店舗の所有者から不動産を取得し、リノベーション工事を実施後、テナント(宿泊事業者や店舗経営者等)に賃貸し、賃貸事業から得られる賃料収益をもとに投資家へ分配を行う事業。










②賃貸住宅のリニューアル工事を行った後に賃貸事業を営む場合

投資家からの出資をもとに賃貸住宅を賃借し、リニューアル工事を実施後、入居者に対して転貸し、転貸により得られる賃貸収入から賃借により所有者へ支払う賃料等の費用を控除し、投資家へ分配を行う事業。









知り合い等の身近な方から出資を募って事業を行う場合にも不特事業に該当し、不特法に基づく許可又は登録を受ける必要があります。

(2小規模第1号事業

(ア)小規模第1号事業の概要

「小規模第1号事業」とは、投資家と不特契約を締結し、当該不特契約に基づき営まれる現物不動産の取引から生ずる収益又は利益を分配する事業です。

小規模第1号事業を行うためには、小規模第1号事業の登録を受けた者(以下、「小規模第1号事業者」といいます。)である必要があります。また、投資家の募集や投資家との不特契約の締結は、小規模第1号事業者自らが行うことが可能ですが、不特契約の締結について代理・媒介を他者へ委託することもできます。他者へ委託する場合には、第2号事業の許可を受けた者(以下、「第2号事業者」といいます。)へ委託することが必要となります。












不特法では、投資家は「特例投資家(不特法第2条第13項に規定する者)」と「一般投資家(特例投資家以外の者)」の2種類に区別されており、投資家の種類によって一の投資家から調達できる金額は異なります。

一般投資家は投資のプロではないことが多いため、投資家保護の観点から、一の投資家が各小規模第1号事業者に対して出資できる合計額は「100万円以下」と定められています(不動産特定共同業法施行令(以下、「施行令」といいます。)第2条第1項第1号)。

一方、特例投資家はプロの投資家であることが考慮され、一の投資家が各小規模第1号事業に対して出資できる合計額は「1億円以下」と定められています(施行令第2条第1項第1号)。

また、小規模第1号事業者が調達できる出資総額は「1億円以下」と定められています(施行令第2条第1項第2号)。













(イ)小規模第1号事業者

小規模第1号事業者になるためには、不特法に基づく小規模第1号事業の登録を受ける必要があります。登録要件は、以下のとおりです。











































小規模第1号事業者は、不動産賃貸業や不動産売買業等の他業と小規模第1号事業をオンバランスで行う場合が多くなります。そのため、小規模第1号事業者の他業に係る口座と、小規模不特事業で使用する口座を分ける必要があります。なお、複数の小規模不特事業を行う場合には、小規模不特事業ごとに使用する口座を分ける必要があります。


(3)小規模特例事業

(ア)小規模特例事業の概要

「小規模特例事業」とは、特別目的会社SPCを活用した倒産隔離型スキームです。小規模特例事業の特徴は、事業者が行っている他の事業も含めて同一の会社で行う小規模第1号事業とは異なり、別の会社であるSPCを活用して行うため、事業者本体の経営と分離されている点です。そのため、SPCを活用して行う事業は、事業者本体のバランスシートには計上されない取引オフバランスになるため、事業者本体の有利子負債の拡大を避けることが出来るという利点があります。

小規模特例事業者は、不特契約に基づき行われる現物不動産の取引に係る業務を小不特契約に基づき行われる現物不動産の取引に係る業務を小規模第2号事業の登録を受けた者(以下、「小規模第2号事業者」といいます。)へ委託し、不特契約の締結の代理・媒介に係る業務を第4号事業の許可を受けた者を(以下(、「第4号事業者」といいます。)へ委託することが必要となります。













投資家は、「特例投資家」と「一般投資家(特例投資家以外の者)」の2種類に区別され、投資家の種類によって一の投資家から調達できる金額は、小規模第1号事業の場合と異なります。一般投資家の場合には、一の投資家が各小規模特例事業者に対して出資できる合計額は「100万円以下」と定められています(施行令第2条第2項第1号)。一方、特例投資家の場合には、一の投資家が各小規模特例事業に対して出資できる合計額は「1億円以下」と定められています(施行令第2条第2項第1号)。なお、出資上限額の考え方については、国土交通省「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」第4-6をご参照ください。

また、小規模第2号事業者が、複数の小規模特例事業者から業務を受託している場合には、受託している全ての小規模特例事業者に係る出資の合計額は「10億円以下」と定められています(施行令第2条第2項第2号)。

なお、工事費用が1億円を超える宅地の造成、新築、増築、改築、移転、修繕又は模様替を行う小規模特例事業の場合には、一般投資家は投資することができません(不特法第2条第8項第4号。



















(イ)小規模特例事業者

不特法の制定時、「倒産隔離」や「SPC」の概念は日本の不動産投資市場で一般的ではありませんでした。その後、市場の発展を受けて平成25年に不特法が改正され、不動産の取得・保有・収益分配等の不特事業に係る業務のみを行うSPCを設立し、不動産の運用に係る業務を第3号事業の許可を受けた者(以下、「第3号事業者」といいます。)に、不特契約の締結の代理又は媒介に係る業務を第4号事業者に委託をする場合、

不動産を所有する「器」に過ぎない事業者であるSPCは、「許可」を取る必要はなく「届出」で事業を行うことができるようになりました。

平成29年の不特法改正により、特例事業者と同様に不動産の取得・保有・収益分配等の不特事業に係る業務のみ行うSPCを設立し、不動産の運用に係る業務を小規模第2号事業者に委託し、小規模不特契約の締結の代理又は媒介に係る業務を第4号事業者に委託する事業者を「小規模特例事業者」とする新たな制度が創設されました。

小規模特例事業者も特例事業者と同様に届出で事業を行うことができます。

(ウ)小規模第2号事業者

小規模第2号事業者は、小規模特例事業者から委託を受け、現物不動産の不動産取引に係る業務を行います。

小規模第2号事業者となるためには、不特法に基づく小規模第2号事業の登録を受ける必要があります。小規模第2号事業の登録要件は、小規模第1号事業の要件と同様です。

(エ)第4号事業者

小規模第1号事業では、小規模第1号事業者が出資を自ら募ることもできますし、第2号事業者である他者に委託することもできますが、小規模特例事業では、小規模特例事業者が自ら出資を募ることはできず、小規模不特契約の締結の代理又は媒介業務を第4号事業者に委託することとなります。

また、特例事業小規模特例事業も含みます。)に係る不特契約に基づく権利は、金融商品取引法昭和23年法律第25号。以下、「金商法」といいます。)における「みなし有価証券」に該当するため、第4号事業の許可を受けるための要件の一つとして、第二種金融商品取引業の登録を受けていることが必要です。